●ファンタジーがオスカーを制覇した夜に●

 今日は東京では雪が降りましたが、わたしにとってはとても良い日でした。
 ピーター・ジャクソン、おめでとう! 遠い極東の地から心よりのお祝いを!
 世界じゅうから届いている祝福の中の、ささやかなひとつに過ぎないでしょうけれど、それがわかっていても祝福のキスを百万回送りたくなります。
 本当は仕事でにっちもさっちもいかない状態なのですが、どうしても気になって、WOWOWの授賞式を見てしまいました。こんなに気持ちのいい授賞式ってば、なかったです! ノミネートされた部門で次々と賞を勝ち取っていく、『The Lord Of The Rings』──でも、一番、肝心な賞が最後に控えています。
 ゴールデン・グローヴ賞は勝ち取っているので、まず、大丈夫だ、と言われています。でも、それでも、この目で見届けなければ。なにしろ、世間一般の、ファンタジーやSFなどの「架空の物語」への偏見は捨てがたく、どんな陳腐な物語でも、現実をベースに置いた物語のほうが架空の世界を描いた物語よりも高級で上等である、と信じて疑わない人が、いかに多いことか! それがわかっていただけに、本当にこの作品がアカデミー賞──オスカーの、もっとも権威ある、監督賞や作品賞を取れるか、それには若干の懸念がありました。
 いよいよ監督賞の発表! わたしは祈りました。取れますように! これほどの作品を創り上げた人の努力が、世界に対して認められてくれますように。
 そして……やりました、ピーター・ジャクソンです!
 凄い! ついに取りました!
 ここまでノミネートされたすべての賞を総ナメにし、あと残るは……作品賞だけです。
 高まる気持ちの中で、発表を聞きました。
 やった! 『The Lord Of The Rings』です!
 四人のホビット役の俳優たち、イライジャ・ウッド、ショーン・アスティン、ドミニク・モナハン、ビリー・ボイド、それにリヴ・テイラーとイアン・マッケランとが、監督とプロデューサー、脚本家とともに壇上へと抱き合いつつ、向かいます。
 オスカーを手にしたピーター・ジャクソンが言います。「ファンタジー、は放送禁止用語じゃないよね?」 この言葉にも、やはり、ファンタジーというものに対しての根強い偏見がアメリカにも存在するんだなぁ、というのを感じました。
 それでも、そうした偏見をものともせず、J・R・R・トールキンの物語が、そして、ピーター・ジャクソンの創り上げたファンタジーの映画が、オスカーを制覇したのです。嬉しくて嬉しくて、飛び上がりたいほどでした。
 正直の話、今日のWOWOWでの授賞式の放映は、日本のスタジオのコメンテーターの言葉がいちいちひっかかって、あまり愉快には見れませんでした。特に、司会の内藤剛士氏……役者としての彼にはいままでは別に何も感想は持っていなかったのですが、今日の言動には反感を感じました。特に、作品賞が発表された直後に言下に言った言葉、「ぼくは人間の話が見たかったから、(この結果は)残念だったのですが……」──アカデミー賞の授賞式の司会役をやっている人が、作品賞の受賞作品に対して、これほどの侮辱を口にすることが許されるのかなぁ、と思いました。
 『The Lord Of The Rings』が、人間を描いた映画でなかったなら、アカデミー賞の作品賞を受賞できたとは思えません。彼は、本当にこの受賞作をちゃんと見たのでしょうか? 彼は、その瞬間に、アカデミー賞そのものも深く侮辱し、傷つけたことに気付いたのでしょうか? いずれにせよ、その場で、彼が授賞式を伝える番組の司会進行役をやっていたことを考えると、信じられない暴言にわたしには聞こえました。
 でも、いいでしょう……それでも、ちゃんと『The Lord Of The Rings』はアカデミー賞において十一部門の受賞を果たしたのです。
 『ペン・ハー』、『タイタニック』に並ぶ快挙であるそうです。
 たぶん、夜通しのオスカーナイトで、ピーター・ジャクソンたち、この映画を創り上げたスタッフたち・キャストたちが最高に幸せな夜を過ごしているだろうと思うと、わたしはとても幸せです。
 おめでとう!
 そして……ありがとう!
 もちろん、アカデミー賞を貰うためにこの作品を創ったわけじゃないと思いますが、結果として、これだけの評価を得ました。得るにふさわしい作品だったでしょう。もしかしたら、これから、映画の作られ方が根本から変わってしまうかもしれない作品です。さらにすごい作品が出てきて、こうしたファンタジー作品がアカデミー賞を獲るのは当たり前の時代も来るかもしれませんね。
 そんなことを夢見て──。
 わたしも幸せになっています。
 この作品と同じ時代に生まれ、その作品に出会えて、そして最後まで見ることができて本当に良かった。二十一世紀に栄えあれ、と思います。