Extra(おまけ)


 さて、その後は、なんといってもケルトとバイキングの国、北欧なので──。ファンタジー作家としては、ここまで来て、何も見ないで帰るわけにはいくまい、としばらくあちこちを見てきました。オスロ郊外の、バイキング船博物館と、そこに隣接する民族博物館は、オスロに寄る機会があるファンタジー好きの方なら、必見です。特に、民族博物館! ここの、木造の古い教会と、ノルウェーの古い住居が再現してある場所は本当に物語の世界に迷い込んでしまいます。衣装の博物館もあり、また、昔の村を再現してある場所には、そうした古い衣装を実際に着ている人たちが、昔のクッキーやお粥(正直、美味しくはなかったです)などを料理していて、食べさせてくれます。もっとゆっくり過ごしたかったな、と思った場所です(それでも、三時間は彷徨っていたんですけれど、飽きるどころか、閉館までいても名残り惜しかったです)。
 ノルウェーもデンマークも、人はとても親切でした。そして、本当に感心するくらい英語をみんなちゃんと話します。ノルウェー語もデンマーク語もドイツ語に似た語感をしているので、たぶん、英語と言葉の構造もよく似ているのかも、と思うのですが、それにしても、ドイツでだって、あんなにみんなが英語をしゃべらないよなぁ、と思います。だから、旅行はし易いな、と思います。
 ただ、物価がとっても高いんですよね(涙)。
 オスロのマクドナルドで、チーズバーガーとコーヒーのスモールを頼んで、47クローネ(1クローネ=17円なので、大体、800円)だったのにも驚いたし、スーパーみたいなところでちょっとした食料品を買っても、あまり安いわけではないので、生活費全般の物価が確かに高いんだと思います。
 それから、すぐにデンマークに行き──どうしても行きたかった、サッカー日本代表のGK川口が所属しているノアシャラン・チームの試合を見に行きました。その時も……なのですが、デンマークではずいぶん電車に乗ったのですが、デンマークの電車のダイヤの正確さには驚かされました。そして、車内には、必ずラインの駅と、次の駅と停車時間の電光表示があって、すごく安心して乗れます。
 試合会場では、川口の大ファンだ、という日本人の青年に会いました。大学生らしく、夏休みを利用して、ミュンヘンに語学留学をしている、とのこと。ミュンヘンから電車に乗って、このコペンハーゲンに、川口に会いたくて旅してきた、とのことでした。「昨日は、バイエルン・ミュンヘンの試合を見てきたんだ」と言っていました。本当にすごく川口選手を信奉しているようで、スタジアムに来る途中に川口選手の車と出会い、サインしてもらった、とのこと。「良かったじゃない」と言うと、「そのせいで、今、心拍数が120くらいになってるんです」と……本当に興奮しているみたいでした。中学・高校とサッカーでGKをしていたという彼は、サッカーをちゃんと見ていて、彼と一緒に観戦したのですが、なかなか楽しかったです。
 その日、川口はベンチで結局、試合に出なかったのですけれど(残念でした……)、彼からインド戦では川口がフル出場したことを聞きました。彼の、川口への熱い思いを聞いていると心地よかったですし、それとサッカーにも情熱的で、バイエルン・ミュンヘンの試合で、ポルトガル語でゼ・ホベルト選手に「ユニをくれ」とボードで訴えて、見事にゲットした体験などを話してくれて、「おれ、こういう場所では、おれが日本人の代表だ、と思って行動しているんです」という言葉にもちょっと感動──頑張れ、日本の若造、という気持ちに。このノアシャランにもこれが初めてではないらしくて、前に来た時は、川口のファンだと訴えたら、スタッフの人に練習場の中に入れてもらえた、ということもあるらしいです。
 ノアシャランの試合は、2-0でノアシャランが勝って終わりました。
 ちょっと大味な試合かなぁ、とは思ったけれど、あんな天候じゃしょうがないかとも思いましたし、デンマークの代表選手であるオルセン選手のシュートは、なかなか凄いものでした。ただ、GKは、川口のほうが全然技術があるんじゃ、と思いました。川口ファンの彼も、そう言っていたのは勿論ですが、わたしたちが贔屓しているのではなく、川口のほうが優れているんじゃないかな、と感じました。コミュニケーションの問題があるのだと思いますが、早くレギュラーの座を実力で勝ち取って欲しいな、と願ってやみません。
 彼とともにスタジアムの外に出ると、前に練習場を見せてくれたというスタッフと彼が偶然に出会い。そこには、川口のレプユニを着ている金髪の坊やがしました。思わず、その写真を撮らしてもらい、坊やと一緒に記念撮影をしてしまいました。こんな遠い地で頑張っている川口を応援してくれてありがとう、これからもよろしくね──そして、きみがトマソンのような世界的選手になりますように。
 彼はまだ川口のために数日はこのノアシャランの本拠地に残るといいますし、選手たちが出てくるまで待つ様子だったので、そこで彼とは別れました。あまり上手いとはいえない英語で、必死でノアシャランのサポたちとコミュニケーションを取っている彼に、気持ちのいい余韻を感じつつ、スタジアムを後にしました。
 あとは、ハムレットの舞台となったクロンボー城を尋ねたり、普通の観光客のように、宮殿の前の衛兵交替を見たり。
 オーフスという、ユトランド半島のほうまで足を伸ばし、そこで紀元前のバイキングの、地面に埋まったままの骨を見たり。
 異国の風は、創作意欲をそそらせてくれます。
 たぶん、また新しいものを書けるんじゃないかな、と。
 トロムソでの体験も含めて、とても刺激的な旅にはなりました。
 仕事をちょっと中断してしまったのですが、どうしても読者の皆さんにもちょっとお伝えしたいな、という内容があった旅なので、こんなふうにレポートを書いてみました。

 では、次の本でお目に掛かりましょう。
 さぁ、仕事に戻らなくちゃ(汗)。