『ヤンノレク騎士団年代記』
『ヤンノレク騎士団年代記』
第一巻 緑なす丘に我らは歌う
第二巻 花の告げし人を称えよ
第三巻 金の果実に祈りを捧げ
小学館パレット文庫
小学館発行
世界における二つの強国であるラグージ共和国とスラムジ教国……宗教対立も含めて激しく争いあうふたつの勢力の狭間に、アスティヤはあった。しかも、ラグージ共和国に属する七つの国にあって、アスティヤは唯一、スラムジ教国と同じ宗教体系にある太陽の女神フウジを信仰している国で、一神教のタマー教徒の国ではない。けれど、ラグージ共和国の中にあって、アスティヤのヤンノレク騎 士団は勇猛さで知られていた。 そのヤンノレク騎士団のリーダー、導者が生まれる、という預言がアスティヤへと巫女たちを通じてもたらせれる。だが、その者が生まれる、と預言された日に生まれた男の子はひとりではなく、三人だった。ラテーヌ・カシェル、トレステン・アヘニード、カイト・エトール。三人は大切に育てられ、青年となる。だが、三人のうち、金髪も麗しくだれもに信頼されるリーダーとなったラテーヌ、物静かだが賢明で誰もに一目を置かれる黒髪のトレステンのふたりは、背も高く、見るからに逞しく、見るからに女神に選ばれてもたらされた騎士団の導者になりそうな若者に育ったが、ただひとり、カイト・エトールは背も低く、人並ではあっても秀でたところはなく、三人の中では落ちこぼれに見える。カイト本人もそれを気にしてコンプレックスを募らせる。何故、おれなんかがあの日におま けで生まれたのだろうと疑問を持つカイトだが、ラテーヌ、トレステンは、ともに育ったカイトを大切な分身として慈しみ、特にラテーヌのカイトへの愛情は傍目にも過剰に映るほどだった。 そんな三人は、スラムジ教国への初めての戦いに赴く。敵将エルヴィアスの猛攻により、孤立するヤンノレク騎士団。戦場に取り残され、ラテーヌの従兄弟であるクリスティンとともに、カイトはエルヴィアスの捕虜となる。そこでカイトは思いがけないことを聞かされる。ヤンノレク騎士団の導者となる最有力候補であるラテーヌにとって、カイトこそが唯一の泣き所、弱点になるというのだ。最初はそんな言葉を信じないカイトだが、その言葉は次第に真実味を帯びていく ──。 パレット文庫、という発表の場を意識したストーリーになりましたが、自分ではとても気に入っている物語です。人間って、どんなに強い人間でも、そんなに強くはないんだと思う、どんな時に人間が強くなれるって、大切な人がいる時だよね……という信念のもとに書いた物語です。 |